スカラベ三島由紀夫論2

スカラベとは糞転がし虫のことだ。三島自身こう語っている。

「過去の作品は、いわばみんな排泄物だし、自分の過去の仕事について嬉々として語る作家は、自分の排泄物をいじって喜ぶ狂人に似ている。」(「『われら』からの遁走」,pp.228~229,小説読本,2010.10.25,中央公論新社刊 所収)

同書の別の箇所では「次に、つまらぬ試みだが、私の各年代の文体の一覧表をお目にかける。」(p.206)と言って

「彩絵硝子」(1940年)「みのもの月」(1942年)「中世」(1945年)「盗賊」(1948年)「日曜日」(1950年)「青の時代」(1950年)「禁色」(1953年)「沈める滝」(1955年)「金閣寺」(1956年)

の9作品を挙げている。ここには

「人の家へ行って、もてなしのつもりで見せられる家族の成長のアルバムほど退屈なものはない云々」(p.205)

と予防線を張っているものの、彼の上記のことが「嬉々として語」られているとしかいえまい。(「自己改造の試み」)

これでは排泄物を嬉々として転がしているスカラベと変わりがないではないか。

三島の自己顕示


三島の態度は

「いいか、よく聞いておれ。重要なことだぞ!」

と、「大上段」に構えて相手を圧倒しようとする強がりのポーズばかりのような気がする。

そして刀を振り下ろそうとするから、鴨居に食い込んで抜けず、石原慎太郎あたりの失笑を買うのである。

今なら却ってボケキャラクターとして人気を博するかもしれないが・・・。

(なお、「小説読本」は三島が出版した本ではない。たんに中央公論新社が三島の評論を同名の書としてまとめたものである。)